1.HPV(ヒトパピローマウイルス)とは
日本語では、ヒト乳頭腫ウイルスと訳されています。ウイルス自体は、皮膚にできるイボの原因になるありふれたウイルスですが、STD(性感染症)として性器への感染が増加しています。現在、HPVは遺伝子の型で分類され、その種類は約100種類もあります。HPVのどの型が感染するかによって、できるイボの見た目も性質も違ってきます。HPVはガンの発生に関係するとされる高リスク(悪性)型と、関係しないとされる低リスク(良性)型に分類されます。
2.感染について
HPVウイルスに接触することにより、皮膚や粘膜の小さな傷からウイルスが侵入し皮膚の一番深い層にある細胞に感染します。感染した細胞では細胞分裂が活発になり、まわりの正常な細胞をおしのけて増え続けます。性感染症の原因になるHPVは、性行為やそれに類する行為により感染します。感染箇所は外陰部、肛門周辺、肛門内、尿道口、膣、子宮頸部などで、乳頭状の腫瘍(しゅよう)がたくさん出来ます。代表的な症状が尖形コンジローマです。尖形コンジローマになるのは、性器に感染したHPV感染症全体の約10%ともいわれています。
3.感染率について
最近、性交渉の活発化や低年齢化にともない無症状のHPV感染が若い女性に拡がっているとの報告があります。これは高リスク型HPVの感染で、子宮頸ガンの発生との関連が注目されています。実際、20歳代の若い女性の間に子宮頸ガンが増加しています。20歳代の既婚妊婦の16.7%が高リスク型HPVに感染しており、女性においてはクラミジアの2〜3倍の感染率で感染が拡がっているとの報告もあります。性交渉の経験がある方であれば誰もがHPVに感染する恐れがあるといえます。
4.高リスク(悪性)型と低リスク(良性)型とは
HPVは感染した場合にガンになるリスク(危険性)が高いか低いかにより、高リスク(悪性)型と低リスク(良性)型に分類されます。低リスク型には、手足にイボを作る2型や尖形コンジローマの原因になる6型や11型があります。症状としては乳頭(乳首)のような球状の腫瘍ができることがあります。高リスク型には、子宮頸ガンや陰茎ガンの原因になると考えられている16型や18型などがあります。症状としては扁平(凹凸のない平面的)な腫瘍ができ、徐々に悪性度を増して最終的にガンに進行するとされています。
5.女性の場合
子宮頸ガンの方の90%以上から高リスク型HPV16型のDNAが検出されたとの報告があり、現在では子宮頸ガンの最も重要な原因と考えられています。しかし、高リスク型のHPVの感染だけで子宮頸ガンが発生することはなく、ガン化にはHPV以外のいくつかの因子が必要であると考えられています。高リスク型HPVは子宮頸ガンでない健康な女性の約10%に検出されます。一般の女性の約10人に1人は高リスク型HPVに感染していることになります。通常、感染したHPVのほとんどは子宮頸部の表面細胞に付いただけで、7〜8ヶ月すると細胞とともにはげおちてしまいます。ところが感染部分に小さな傷があったりすると細胞深く侵入して定着し、細胞の異常分裂を引き起こしガン化への道を歩みます。高リスク型HPV感染例の1〜3%が前ガン病変(ガンになる前の段階)まで至り、そのうちの25%が子宮頸ガンになると言われています。これらのデータを合わせて考えると女性1万人のうち、およそ3〜7人が子宮頸ガンを発症する計算になります。
6.男性の場合
現在の所、男性の場合は実態がよく解明されていませんが、高リスク型HPVが陰茎ガンの原因になると考えられています。陰茎ガンの50%に高リスク型HPVが原因しているとの説もあります。ただし、女性の子宮頸ガンに比べると症例数はかなり少ないです。その原因として女性の子宮頸部に比べ、男性の場合は陰茎亀頭部周辺の洗浄が入浴などで簡単にできるためと考えられています。男性の場合、HPVが尿道から前立腺内に侵入してとどまり、精液に排出されている場合があります。子宮頸ガンの女性のセックスパートナーである男性の性器に何も症状がないにもかかわらず、その男性の精液中に子宮頸ガンと同型の高リスク型HPVが高い確率で検出されているとの報告もあります。このことから、HPVが精液からセックスパートナーへ感染する可能性も考えられます。
7.検査について
性病検査 STDチェッカー
が実施していますヒトパピローマウイルス検査は、高リスク型のHPVを検出する検査で、尖形コンジローマの原因になる低リスク型HPVの検査ではありません。よって、この検査は子宮頸ガン早期発見の為のスクリーニング(ふるいわけ)検査という位置付けとなります。女性のみを対象としており、膣内の分泌液から高リスク型HPVの遺伝子(DNA)を検出します。検査結果が陽性(高リスク型HPVの遺伝子が検出された)の場合は子宮頸ガンが発生する可能性があるので、医療機関で子宮頸部の細胞診を受けて経過観察することが望ましいとされています。細胞診は子宮頸がんの発生しやすい場所の子宮粘膜を綿棒などでこすりとり、顕微鏡でガン細胞がないかどうかを調べる検査です。産婦人科で受けることが出来、痛みもなくすぐに終わる検査です。男性は性器などに症状箇所がないと検査できないのが実状です。現在の所、男性の精液内のHPVを検出する検査は医療機関でも実施されていないようです。
8.高リスク型HPVの感染予防について
高リスク型HPVは、主に男性の精液中や陰茎部分、女性の子宮頸部や膣に存在すると考えられるのでコンドームによる予防はある程度有効ですが確実ではないと考えてください。また、HPV感染予防のワクチンは、現在臨床試験段階とのことです。
エイズとは、エイズウイルス(HIV)に感染してリンパ球の数が減り(ウイルスが増殖し)、免疫力がなくなって発症する病気のことです。よって、 「エイズウイルスに感染しても、リンパ球の数がある一定の数量より減らず(ウイルスの増殖を抑えることができ)、免疫力が低下しなければ、エイズになることもなく死なない」
、ということになります。
それが、今現在行われている「エイズの治療」です。
●エイズの治療について
エイズの治療については、さまざまな研究がなされています。ただ、残念ながらエイズウイルスを完全に駆逐する治療はまだ開発されていません。しかし、エイズウイルスの増殖を抑え、エイズを発症しないようにする治療が確立されつつあります。その治療法について説明します。
(1) まず、どこで治療を行うかが重要です。やはり、エイズの治療経験の豊富な病院で診 てもらうのが一番だと思います。 国立国際医療センターを頂点とする、ブロック拠点病院などで治療されることをお勧めします。
(2) エイズウイルス感染者の治療の開始時期についてですが、エイズウイルスに感染しているからと言って、すぐに治療は開始されません。リンパ球数(CD4陽性リンパ球)が一定の数量未満になった場合が、治療開始の時期とされています。リンパ球数の数が低下するまでに治療を始めればと思うのですが、「治療効果」と治療を始めることにより起こる「副作用」などとのバランスにより考えられているようです。
(3) 治療は標準的に多剤併用療法(HAART)という治療が行われます。服薬による治療で、日本では10数種類の薬剤が認可されており、その組み合わせ(主な組み合わせは5種類)により数種類の薬を服薬します。治療効果の測定や、副作用についても確認しながら薬剤の変更についても検討されます。また、初回の治療をどのように行うかも重要なようです。薬剤の決定については、患者と十分に相談した上で決められます。
以上が、エイズの治療についてのおおまかな内容です。この内容だけを見ると薬を飲み続ければいいわけで簡単なようにも感じられますが、いろいろな弊害もあります。
●継続して服用すること
この治療において重要なことは、服薬を継続することです。服薬率が
90%に下がれば、治療効果が無効になる確率も高くなってきます。飲み忘れ、多忙、旅行、無気力、副作用などの理由により服薬を怠ることがないように注意して生活しなければなりません。1日5錠〜20錠前後の薬を1日1〜3回、飲む時間を定めて続けることが必要です。
●副作用について
数種類の薬を服薬しますが、それぞれの薬剤により、血液・代謝・精神・神経・胃腸・皮膚などに副作用が出る場合があります。いずれの薬の組み合わせでも、
40%前後で副作用が出るというデータがあります。患者の臨床症状なども考慮して薬剤は選ばれます。
●経済的負担
HIV感染症
/エイズは国が医療費を援助する更生医療給付の対象になっており、保険診療での自己負担分の医療費が軽減されます。国の負担を含めた総額の医療費は、一人のエイズウイルス感染者が生存し続けるのに、1億円かかるとも言われています。医療費の問題は国としても大変重要なのです。
エイズウイルスに感染してもエイズを発症しなければ死にいたりませんが、慢性HIV感染者として生活を続けることも大変なことだと思われます。いずれにしても、HIV感染の早期発見は、早期治療に結びつき、病状の重症化防止につながるのです。
